こんにちは、UI/UXデザイナーの池田です。
Jevという新しいAIを知り、「デザインの仕事なら、この速さをどこで生かせるだろう?」と考えて、早速いくつかサービスを作ってみました。今回はまずは小さく作って動かしてみた、その過程と気づきを紹介します。
Jevとは
Jev(ジェヴ)は、TypeSafe AIが公開した、ソフトウェアの中で判断を繰り返すためのAIモデルです。TypeSafe AIはこうしたモデルを「System One」と呼んでいます。
文章を自由に書き出すよりも、あらかじめ決めた問いに対して、プログラムで扱いやすい形式の答えを返すことに特化しています。基本の問い方は3種類です。
- Choice:選択肢の中から1つ選ぶ。たとえば、レビューコメントを「仕様・文言・実装」のどれに分類するか。
- Score:決めた基準に沿って評価する。たとえば、画面の分かりやすさを段階で評価する。
- Noul:条件に当てはまるかを判定する。たとえば、発言に「深掘りしたい課題」が含まれるかを、Yesの確率として返す。
Jevの公式発表:https://typesafe.ai/blog/introducing-system-one-models-and-jev

「数字や選択肢で素早く判断を返す」と聞いて、私はまず、デザイナーの仕事のどこでそれが役立つのか知りたくなりました。そこで、気になった使い方を実際に作ってみました。インタビューを助けるWebサービスが1つ、Figmaで制作中に使うプラグインが3つ。どれもアイデアを少しずつ形にした試作で、精度や使い勝手の調整はこれからです。「こんなことまで試せるんだ」と、使い道を考える材料として読んでいただけたらうれしいです。
【Webサービス】Jevでインタビュー中リアルタイムで深掘り質問を提案する
最初に試したのは、ユーザーインタビューをリアルタイムで支えるWebサービスです。XでJevの事例を探していたとき、かねこつよしさんが公開した、発言のたびに会話の状態を更新する試作を見つけました。「これをインタビューで使ってみたい」と思い、参考にしながら自分が使いやすい形を考えました。
着想の元になったかねこつよしさんの投稿:https://x.com/tsuyoshi_osiire/status/2100734646824902713
私はまだ、顧客と1対1で向き合い、課題を引き出すインタビューの経験が多くありません。相手が「手作業で探しています」と話したとき、何を掘り下げれば、その人自身も気づいていない困りごとに近づけるのか。質問の仕方に迷うことがあります。会話を聞きながら次の質問候補が出てきたら、聞き手にとって心強いサポートになるはず!と思い作ってみました。
動画では、中央に時刻付きの発言、右に「次の深掘り質問」、左に確認したい項目を表示しています。人材紹介サービスの業務を想定したデモでは、候補者を選ぶときの暗黙の判断基準に着目し、「入れるか迷った方はいましたか?」などの質問候補が出ます。質問を使ったか、後で確認するかも記録できます。

動画で撮っているのはデモデータですが、本番では裏でGoogle Meetを起動して、もう一つ補足で作った読み取るためのChrome拡張機能を稼働させて音声を真ん中のところに表示させます。
会話が盛り上がると、質問だけでなく、残り時間や聞きたい項目も気になります。今回のJev実験には関係ないですが、そこも見えるようにし、準備段階では課題や前提を入れると質問票のベースを作れるようにしました。少し試すつもりが「ここも支援できそう」と作りたいものが増え、ついのめり込んでしまいました。
現状の質問候補はまだ的確とは言い切れませんし、動画は合成データによるデモです。今後は質問の質を上げていけるように判断の設計を工夫していきたいと思っています。
【Figmaプラグイン1】Jevで画面の体験設計を点数化する
次は、普段の主な仕事であるUI制作に目を向けました。Figmaで作った画面を選ぶと、アプリの目的やユーザーの状況を踏まえて、すぐにレビューの観点を返してくれるプラグインです。
最初は、ヒューリスティック評価やアクセシビリティのように、基準が言葉になっている観点から試しました。ただ、指摘が細かく並び、個々の画面をどう直すかという判断にはつながりにくいと感じました。細部の点検は大切ですが、まず見たいのは、画面を通してユーザーが目的を達成できるかどうかです。
そこで第2弾では、複数画面の流れを対象に、先輩へレビューをお願いするときや、お客様にデザインの意図を説明するときに気になるUXの観点を加えました。体験としての完成度を点数化し、どこに改善の余地があるかを「直したい」「確認したい」「良い点」「判断不能」に分けて返します。動画では画面の順序を指定して結果を表示し、指摘から該当画面へ移動する様子を見られます。

たとえば教育アプリなら、子どもが迷わず学び始められるか、終えた後に達成感を得られるかを見たいところです。アプリの目的や想定ユーザーを入力する項目はすでに用意してあり、撮影時にはまだ入力できていませんでした。一度前提を入れれば、各フローを作る途中で素早く点数と指摘を見て、どこを見直すか絞る。そんな使い方ができそうです。
動画に表示されているのは「モック判定」で、結果の妥当性はこれから使っていく中でブラッシュアップしていこうと思っている段階です。点数を完成度の証明として使うのではなく、UI調整のきっかけとして使いたいと思います。指摘の内容やUXの観点、修正しやすいフィードバックの言葉も磨いていきたいです。
【Figmaプラグイン2】Jevで100人に1秒でユーザーテスト・ユーザーのつまずきを予測する
次に思いついたのは、作った画面を「初めて使う人なら、どこで止まりそう?」という視点で見るプラグインです。今度はもっと多いのデータを処理するもので、性能を試したいと思いこのサービスを思いつきました。このサービスは、仮説ユーザーを100や1000などの単位で設定し、目的の操作を最後まで進められそうか、画面ごとにつまずきをシミュレーションします。(一旦デモなので100までにしてますが増やしても良さそうです)
動画では、画面ごとの到達・停止・離脱の推定や、初回利用者、急いでいる人などの条件別の結果を表示しています。短いアクティビティのアプリを例に、開始する前に離れてしまう人や、タイマー操作で迷う人がいそうかを眺め、優先して見直す箇所を探せます。

50人、100人と仮想ユーザーを増やせるのは面白い一方、人数を増やしただけで結果が正確になるわけではありません。表示される達成率も実際のユーザーを測った数値ではなく、入力した条件に基づく仮説です。事前に渡すユーザー像や目的を整え、実際のユーザーテストで確かめるべき問いを見つける用途に育てたいと思います。
【Figmaプラグイン3】コメントの地図 指摘を整理して次に生かす
最後は、Jevが話題になる前から作っていたコメント解析プラグインです。Figmaにたまったレビューコメントを、仕様・要件、文言、実装、デザイン品質などに整理し、頻出する指摘を次の制作前に確認できるチェックリストへ変えます。Jevに切り替えたら速度がどう変わるかを試しました。
動画には、コメントのタイムライン、カテゴリ別の集計、振り返り、AI比較が映っています。同じ「仕様が分からない」という指摘が繰り返されているなら、画面を作る前に前提条件や分岐を明記する、といった改善につなげられそうです。

比較機能を作って試した結果、Geminiでは約17秒、Jevでは約2秒で結果が返りました。ただ、17秒も待てないほどではなく、一度使うだけなら体感の差は想像より小さかったです。何度も繰り返す作業や、もっと多くのコメントを扱う場面なら、待ち時間の積み重ねが効いてくるかもしれません。具体的にどれくらい変わるのか明確に見えて面白かったです。今後は、Jevが向いている場面をAIに判断も聞きつつ、要所的に取り入れられたらいいかなと思いました。
試して感じたこと
4つの試作を通して感じたのは、待ち時間が短いと、制作や会話の途中にAIの判断を差し込みやすいことです。インタビューの次の問いを考える、画面を直す前にUXの点数と指摘を見る。結果を受け取ってすぐに次の行動へ移れるなら、特にスピードを重視する機能で力を発揮しそうです。コメント解析では一度あたりの差は小さく感じましたが、何度も使うなら積み重なります。
もう一つ試してみたいのは、大量の情報を扱う場面です。大規模なユーザー調査やアンケートで集まった自由記述を分類したり、内容を見て適したAIや人に振り分けたり。今回扱ったデータはまだ少量なので、これは次に検証したい使い道です。速い判定をどこに置けば、デザイナーもユーザーも次の一歩を踏み出しやすくなるか、引き続き探っていきたいと思います。
おまけ|最後にこれをどうやって作ったのか手順を紹介します
私はエンジニアではなく、HTMLとPythonが少し分かる程度なので、基本実装はClaude先生に任せっぱなしです。
ChatGPTで企画を整理し、Claudeに実装を進めてもらうというのが、普段の私の進め方です。
今回追加したのは、試作からJevを呼び出すための設定です。別でやらないといけない手順はたったの3つ。

- まずTypeSafe AIの公式コンソールで登録(TypeSafe AI Console:https://console.typesafe.ai/)
- APIキーを1つ発行
- その後、Claudeの指示に沿って設定用のファイルにキーを入れ、試作からJevを使えるようにしました。
私が手を動かした設定はそのくらいです。
簡単にどんどん自分がイメージしたものが形にできてとても楽しいので、ぜひ皆さんも試して欲しいです。
あしたをオモシロクする体験へ
bravesoftは「あしたをオモシロク」を掲げ、ユーザーの心を動かし、行動が前向きに変わるような体験づくりに取り組んでいます。たとえば教育サービスなら、画面が使えるだけでなく、子どもが「明日も学んでみたい」と思えることが大切です。今回の試作も、作り手の判断を少し助け、その先の体験をよくするための一歩だと思っています。まだ試作段階ですが、こうした取り組みに興味があれば、ぜひご相談ください。bravesoftでは中途・新卒のデザイナーも募集しています。