今回ご紹介させて頂くインタビューは、株式会社マイナビ様の執行役員 農業活性事業部事業部長の池本様と、
同事業部マーケティング担当の井口様にご来社頂き、
2019年9月30日に正式リリースされた農業を始めたい人と農家をつなぐスマホアプリ「農mers」を開発した背景と、
同じく2019年10月2日に発表されたグッドデザイン賞2019受賞につきましての率直なご感想、
そして今後の農業という産業に対し、どのような展望をお持ちであるかなど、お話を頂きました。


インタビュアー
広報戦略本部:高瀬


↑ 写真左:井口様、写真右:池本様

はじめに

高瀬「本日は宜しくお願い致します。まずは池本様・井口様が所属される”農業活性事業部”という部署は”マイナビ農業”の運用がメインの部署であるとのことですが、マイナビ農業はいつ位からスタートした事業になりますでしょうか?」

池本さま「マイナビ農業自体は2017年の8月1日にローンチされたサービスとなりますので、現在2年と2ヶ月になります。事業部が立ち上がったのが3年前ですね」

高瀬「マイナビ農業はどのような経緯で誕生したサービスなのでしょうか?」

池本さま「株式会社マイナビは人材メディアを通して、ここ10数年間で急成長できた会社です。その成長要因としては47都道府県をカバーする支社網を構築して、地域の会社様にご愛顧頂けた事が大きな成長要因です。その背景から、”地域に対して何らかの恩返し、貢献がしたい””日本が抱える課題を解決したい”という思いで生み出したサービスで」

高瀬「その地域への貢献という命題の中で”農業”というテーマをお選びになったのは池本様だったのですか?」

池本さま「そうですね。一番可能性があり、面白いなと思ったのが農業でしたので、提案しました」

高瀬「現在何名くらいの方が農業活性事業部に所属されているんですか?」

池本さま「現在80名くらいですね(2019年11月現在)。現在、地域としては北海道・東北・大阪・熊本に支社展開をしておりまして、マイナビ農業のメディアの販売をしている営業と、記事の作成をするディレクターで構成されており、東京のヘッドクォーターには営業、制作の他に編集部、そしてシステム開発・イベント運営等などのセクションを配置しています。」

高瀬「その中でマイナビ農業というサービスが、農業業界でどのような立ち位置・位置付けでありたいとお考えなのでしょうか?」

池本さま「マイナビ農業は”農業の総合情報メディア”として農業界にとって唯一無二の存在に成長させていけたらなと考えています。また、マイナビの農業活性事業部はマイナビ農業だけでビジネスが完結するものでは無いです。我々としては”今まだ無い、新しいサービスを農業界に提供して、何らかのインフラになりたい”という思いがあります。農業は今でこそ注目度の高い業界ではありますが、産業全般で見た時にはこれからどんどんイノベーションが起きてくる業界だと認識しています。その中にあって我々が提供するサービスが農業において新しい価値を提供出来るよう挑戦をしていきたいと考えています。

農mers作成に至るまでの経緯

高瀬「その上で実際に”農mers”という企画を立ち上げようと思った具体的なきっかけとなったのは、どのようなきっかけだったのでしょうか?」

池本さま「まずマイナビ農業を立ち上げた際のお話をしますと、我々はマイナビという就職サイト・転職サイトといった人材メディアを取り扱う会社なので、マイナビ農業は、“農業に関する雇用を行う”ということを考えたのですが、他の産業のように”農業法人にお金をいただくモデル”、”農家様から掲載料をいただくビジネスモデル”というのは厳しい、現実的ではないと考えました。」

高瀬「確かに、個人事業主の方や、兼業農家の方が求人原稿を掲載するというのはあまり考えられませんね」

池本さま「ですのでマイナビ農業に関しては”総合情報サイト”として立ち上げたんですが、農業界における課題は雇用、人材の確保のニーズが大きいので、何か方法は無いかと思い、”マッチング”という手法を考えたのが、農mersの企画に至った切っ掛けですね」

高瀬「そのような背景がおありだったのですね。ちなみに、そのマッチングが、雑誌や紙媒体、WEBではなく、”アプリ”であった理由はどのような理由なのでしょうか?」

井口さま「農家様側というよりかは、農業をしたいと思う”今後の働き手”が手軽に活用できるものという目線で、アプリという選択に至りました」

高瀬「確かに働き手はアプリに抵抗は無さそうですが、農家側はアプリを使いなれていない高齢の方もいると思いますが、そのような懸念などは無かったのでしょうか?」

井口さま「例えば、Facebookの農業コミュニティーは年代に関わらず利用されており、5年後・10年後を見据えた上ではよりこうした手法が重要になるかなと。短期的というよりかは長期的な視点で考えた際はアプリの方が需要は高いと思い決断しました。10年後など近い将来、農業界における人材の問題は今以上に深刻になると考えておりますので、10年後に慌てて対応するよりかは我々のような会社が今のうちにインフラを整えていきたいという使命感もありましたね」

高瀬「初期のペルソナは”Facebookをできる農家”という設定があったのはそのような理由だったのですね。ちなみに私は勉強不足で全然業界に対する知識が無いのですが、今現在農家の方はどのような手法で人手を集めたりしてるのですか?」

池本さま「各地域に組合がありまして、基本はA農家が収穫をする際には、B農家・C農家など、地域で手伝うのがスタンダードな働き方で、もう少し人手がいる際などはパートさんが集まるような文化があるんですが、パートさんの高齢化もあり、今では外国人実習生などが地域で雇用するというのが今の状況ですね。何れにせよ地域に人を呼ぶというのが難しいのが現状ですね」

高瀬「そのような形でスポットワーカー的な働き方で急場を凌ぐ手法が一般的なのですね」

池本さま「とは言え、最近ここ10年くらいは農業は国からの助成金が出るようになりまして、個人事業主から農業法人に変わってきているんです。その中で短期労働であっても雇用形態・就業規則を結ばなければならないのですが、そこがまだおざなりになっている部分もございましたので、その部分に警笛を鳴らしたいという思いで”農mers”を立ち上げたという理由もあります」

高瀬「そうした仕組みを正すという意味でも農mersは必要だったという事ですね」

農mers作成〜リリース

高瀬「そうした検討の上で、農mersのプロジェクトが始動したのですが、プロジェクト始動当初、我々bravesoftは池本様・井口様からはどのようにお映りになりましたでしょうか」

池本さま「これまでの開発実績もさることながら、プロジェクト始動のタイミングで一緒に企画を考えてくれたり、歩み寄ってくれる事が多かったので、非常に信頼できるパートナーだと思いました」

高瀬「ありがとうございます!そう言えば、お聞きしたかったんですけど、当初の資料では”ノマドファーマー”というアプリ名で提案させて頂いたようですが、どういう経緯で”農mers”というインパクトのあるネーミングのアプリ名になったのですか?」

井口さま「ノマドファーマーの名称は原型として残ってますよ。名称を短くして農mers(ノウマーズ)ですので(笑)」

池本さま「やはり農業の”農”という言葉を使いたかったんです。ここ10年くらい出てきた農業のサービスは”アグリ”という名称を使うサービスが多かったのですがそことは一線を画して、マイナビ農業から派生して”農”を使いたかったので、”農mers”になりましたね」

高瀬「そうした理由がおありだったんですね」

池本さま「可愛いロゴも作って頂いてありがとうございます。このロゴを元としたぬいぐるみをbravesoftさんに作ってもらえるという噂があるとかないとか…(笑)」

高瀬「(笑)そんな農mersでしたが、企画開始当初にて、”これだけは実現したい”と思っていた内容はありますでしょうか?マッチング以外などサービスの根底以外の機能や、概念的な内容でも良いのでお聞きしたいと」

井口さま「”シンプルであること”というのは常にありましたね」

池本さま「あとは”スキルの構築”は考えていました。農業は経験年数がものを言う産業なので、そうした指標のようなものは導入したいと思っておりましたし、それは農業ビジネスにおいて今までない概念でしたので、そこはこだわりました。あとは”データの蓄積”もしたかったですね。農業は後継者不足という非常に大きな問題を抱えておりましたので、そうした”農業を一生の仕事にしても良い人”のデータは欲しかったですね」

高瀬「そしてデザインのフェーズのお話をお聞かせ頂きたいのですが、今回ありがたくグッドデザイン賞を受賞することができましたが、もともとデザインに関して希望されていた事とかはございましたか?」

井口さま「見た目に関しては”葉っぱ”というよりかは”土”に近い、シンプルなデザインを希望しましたね」

高瀬「結果的にそれは実現できたという理解で良いですか?」

井口さま「そうですね。要望通りに仕上げて頂けたと思います。グッドデザイン賞の受賞に関してはグラフィックもさることながら”農スキル”という制度や、社会課題解決という部分も評価されたようですが、それでもデザインの”誰でも見てわかる”という部分も評価されたのかと思います」

高瀬「ちなみに今回、“グッドデザイン賞に応募しませんか?”という打診は弊社からだったんですよね?」

池本さま「はい、阿部様(注:弊社ディレクター)に無理やり(笑)」

高瀬「(笑)」

池本さま「というのは冗談ですが、正直、我々はグッドデザイン賞に関しては全く考えていなかったのですが、そうした提案を頂いた事で評価をされたことは我々にとっても嬉しいし、ブレイブソフトの皆様が喜んで頂けた事で我々も良かったと思っておりますし、その我々になかったデザインという着眼点でサービスを考えてくれたのは我々としても嬉しかったですね」

井口さま「デザインもですが、設計などにも力を入れて頂けて、いろいろ考えてくれたのは有難かったなと思っております」

池本さま「農mersのプロジェクトはこれからもずっと続いていくプロジェクトとなりますので、今回はグッドデザイン賞を受賞する事が出来ましたが、これからも形を変えて農業界になくてはならない仕組みになっていければ良いと思っておりますね。今はようやくスタートラインに立てたなと。」

高瀬「是非、これからも宜しくお願いいたします。ちなみに現在すでにマッチングの事例はあるのでしょうか?」

井口さま「そうですね、静岡のみかん農家様など…すでに何例か事例はございます。プレスリリースを見て知って頂いた農家様が案件登録して、マイナビ主催の就農フェストなどで興味を持って頂いた働き手の方とマッチングされたという例は届いています」

高瀬「実際農家の方からどんな声が届いているんですか?」

井口さま「ありがたいことに、前向きなご意見が多いですね。”アプリ操作は慣れないけど頑張ってみるよ”など」

高瀬「それは嬉しいですね」

池本さま「農mersの最大のメリットは”完全無料であること”なんです。まずは農家様に使ってもらえなければ意味がないので、実証実験も同時に行っております」

高瀬「そうなんですね。現時点で考えている新機能とかは既にあるのでしょうか?」

井口さま「現在は機能追加というよりかは機能の改善に注力しております。やっぱり実証実験もそうですが、実際に使って頂いて出てくる課題なども多いので、より現場の声を反映させたサービスにしていきたいなと考えております」

今後に向けて

高瀬「今回はプロジェクトマネージャーの王と、ディレクターの阿部がメインで担当させて頂きましたが、感想としてはどうでしたか?(笑)」

井口さま「すごく熱心に、密にやって頂けました。農業という馴染みのない領域だったと思いますが、真剣に取り組んで頂けました」

池本さま「これからが勝負ですので、農mersが全国に普及していく上で、これからも最善のものを作っていけるようにご一緒して頂ければと考えております!」

高瀬「農業活性事業部で今後考えられているビジネスモデルとかはあるのでしょうか?」

池本さま「農業という領域をテーマに、これまでに無いものを作り上げていきたいと思っております。bravesoft様の経営理念にもある”新しいものへの果しなき挑戦”という部分とも同じで、農業から見えた社会課題に取り組んでいきたいと思います。具体的には、年明けに自治体向けのフリーペーパーを作るなどですかね」

高瀬「今後、池本さまと井口さまが達成したい目標・ビジョンと言ったものをお伺いしたいのですがいかがですか?」

井口さま「農業という文化に一般の消費者、子育て世代などが気軽に触れられる世の中に変えていきたいとは思っています。やはり農業は地方の文化と思われがちなのですがそうではなく身近なものであると伝えていきたいですね」

池本さま「私は儲かる仕組みを作っていきたいですね。農業界で儲ける仕組みを作るのは本当に難しいと思ってますが、そうした仕組みを作る事で農家の方が幸せになって頂ければ我々も幸せになりますので、そうした仕組みを作りたいですね。現在、農家で儲かっている方は全体の10%にも満たないので、そうした方々も儲ける仕組みを作っていきたいですね」

高瀬「それは素晴らしいですね」

池本さま「その上で農業が“副業の中でも稼げるビジネス”と思える世の中にしていきたいですね。”半農半X”という言葉が農業界ではよく言われるのですが、ITの仕事をしながら土日は農業をやるようなスタイルですね。海外でも”アーバンファーミング”と呼ばれ、そのような仕組みは流行っているんです」

高瀬「それは日本でも普及しそうな文化ですね。ありがとうございました。それでは…最後に一言、弊社にメッセージを頂けますでしょうか?」

池本さま「”新しいものへの果てしなき挑戦”は我々もやっていきたい事なので、これからも一緒に新しいこともやっていきたいですね!

高瀬「是非是非よろしくお願いいたします!本日はどうもありがとうございました!」

↑ 最後は弊社代表の菅澤とPJメンバーも交えての記念撮影!この後は打ち上げで美味しいお肉を食べました!

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二代目編集長