bravesoftにて受託開発を行うDX UNITの取り組みを、どのように実現していくかを紹介する本コーナー「DX事例紹介」、第4回目は、昨年2020年3月20日にリリースした「AI StLike(AIストライク)」を運営する、株式会社ベネッセコーポレーションの永田様と石田様にお話頂きました。

昨年末には日本e-Learning大賞において経済産業大臣賞も受賞し、高校生の間の口コミも広がり、現在注目されているAI StLikeですが、先日にはこれまでの数学に加えて、待望の英語教科も追加された本サービスにおきまして、ベネッセコーポレーション様とbravesoftで共同チームを立ち上げてどのように取り組んで行ったのかを、インタビュー形式でご紹介させて頂きます。

 

プロジェクトメンバー

ベネッセコーポレーション様
AI StLike 開発責任者 :永田様
AI StLike 開発リーダー:石田様


bravesoft
開発責任者       :青木
プロジェクトマネージャー:助川
デザイナー       :Tom
ブリッジエンジニア   :シン / マイちゃん
開発          :bravesoft Vietnam

※今回のインタビューは、ベネッセコーポレーション永田様、石田様、
bravesoftは開発責任者の青木、PMの助川、BSEのシン、広報の私で行いました
(MTG中の写真を撮影できませんでしたので…その点ご了承下さい)

 

短い納期だけど”やるしかない”状況でした

高瀬「本日は宜しくお願い致します。まずは永田様、石田様の普段の業務内容を教えて頂けますでしょうか」

永田「現在、私は2つの部署に所属しております。1つ目はオンライン指導開発室という部署で、コロナの影響もあり必要性が高まっているオンライン授業を『進研ゼミ』会員に対して行っており、その中で私は、システム開発をはじめとする基盤面のリーダーをしております。2つ目が『こどもちゃれんじ』の部門でデジタル商品を開発するチームのリーダーをしております。AI StLikeはオンライン指導開発室の中の1プロジェクトとして開発・運用を行っております」

石田「私はオンライン指導開発室に所属しながら、AI StLikeの開発PMや、bravesoft様と開発しているClaCalStudyCast開発リーダーを務めております」

高瀬「AI StLikeはどのようなきっかけで作ろうと思ったのでしょうか」

永田「元々、『進研ゼミ』でオンライン授業を展開させる計画を立てておりました。その中で、リアルタイムな授業だけでなく、自宅で学習できる動画講義や演習の開発もテーマとしてありました。しかし、既に世の中には動画コンテンツが無料・有料サービスとしてあふれていたので、その1歩先のサービスを作りたいと思って、AIと組み合わせたサービスを考案しました。2018年の終わりから構想をはじめて、2019年からプロジェクト化しました。」

高瀬「そうしてプロジェクトチームが結成され、石田様がリーダーに任命されたのですね」

石田「勝手に巻き込まれました(笑)」

高瀬「(笑)AI StLikeは“Study”と”Like”を掛け合わせた造語との事ですが、この名前は永田様がお考えになられたのですか?」

永田「いいえ、同じプロジェクトの別メンバーが考えた案ですね。私はこういう時には誰よりもアイデアを出すのですが、1回も採用されたことがありません(笑)」

高瀬「(笑)それでは、そうしてベネッセ様でプロジェクトが始動してbravesoftにて開発の相談を受けたと思います。まずは青木さんに話があったと思いますが、最初にお話を聞いた際のエピソードはありますか?」

青木「最初にお話をもらった際に、結構短納期だったんです。確か2019年の10月に話を聞いて2020年の3月にリリースと日程がタイトなので…bravesoftで一番パワフル助川をPMにアサインしたんですが(笑)それ以外のメンバーに関しては、シンをはじめとするロクマルチーム(ClaCal・Studycastの開発チーム)など、ベネッセ様とのプロジェクト経験のあるメンバーでやりたいと思いました」

助川「正直ベースで話すと、初めて青木さんから相談を受けた際、ベネッセ様でもかなり力を入れたプロジェクトであるという話を聞いていたので、短納期という部分に関しては“リスクが高すぎる“と思いました。ただ、それでもやるしかない状況だと思いましたね」

シン「私も同様ですね。もうやるしかない状況なので、やりましょうと思いました」

 

動画学習アプリの”決定版”を作りたい

高瀬「プロジェクト始動にあたって、動画講義+AIというプロジェクトの大枠は決定していたと思いますが、それ以外に実現したいテーマや世界観はあったのでしょうか」

永田「今回、もう1つのテーマとしては、世の中に動画コンテンツは子どもたちが選びきれないくらいにたくさん存在している中で、その“決定版”を作りたいと思いました。ただ、同じ動画を提供するだけだと意味がないと思い、一人ひとりに合わせた講義展開にチャレンジしたい、と。また、”決定版”と言う以上、UXにはこだわりたかったですし、UIに関しても、競合サービスよりもカッコよくしたかったです」

高瀬「そのような永田様がお持ちだったUIのこだわりに対して、bravesoftはどのような形でトライしたのでしょうか」

青木「まずは永田様が仰ったような学習体験をそもそも我々の世代は経験したことがないので、まずは永田さんにその体験がどのようなものかを説明してもらって、そのやりたい世界観を理解する事からスタートしましたが、それこそこれまでには存在しないサービスとなりますので、色々と考えて結構苦労しましたね。色々なパターンを作って見て頂きました」

石田「最初にデザインイメージを頂いた際に、確か3案くらいアイデアを頂いたのですが、最も今までの『進研ゼミ』っぽくないデザイン我々は採用しましたね(笑)」

永田「なかなか社内で合意を得られなかったのですが、今までにない新しいサービスにするという意味も込めて、そのデザインを採用しました」

高瀬「骨子やデザインが決まり、開発フェーズで苦労したエピソードはありましたでしょうか」

永田「短期間の開発でありながら、アプリそのものだけでなく、AIのプログラムや学習コンテンツの制作、問題の複製プログラムの開発など、複数の会社と並行してプロジェクトを進めないといけなかったことに苦労しました。あとは、AIの性質上、データが集まらないと前に進まないという局面もあったため、それをどう打開するかも苦労しました」

石田「『一人ひとりに最適な学習を提供する』ことにここまで徹底的にこだわったアプリを作るのは初めてだったので、こうして1から作り上げていくのは非常に苦労しましたが、とても勉強になりましたし、成長する事が出来たと思ってます」

高瀬「そのような苦労の中で意識していた取り組みやマインドなどはありましたでしょうか」

永田ONE TEAMとして取り組んでいくことを強く意識していましたね。リリースまで時間がほとんどなく、たくさんの会社様にプロジェクトに参加していただいていたのですが、そんな中でも全社集まって毎週“定例会”を行っており、どちらかというと進捗管理よりはチームビルディングの意味、サポートし合える関係性の構築を大事にしておりました」

助川「短納期であり、複数社が入っているプロジェクトでしたが、ベネッセ様がリーダーシップをとっていてくれた点や、やり取りに対するレスを早く頂けたので、その点は非常にやりやすかったです。そうした中で、私もAIの経験はなかったのですが、スピード優先を意識して、自分で資料を読み込み、仕様の着地点を早急に決めていくような動きを生み出す事が出来ました。あとは、シンさんの力も大きかったですね」

シン「今回の開発はベトナム子会社で行ったのですが、運悪くこの時期はテトというベトナムの長期休暇の時期だったんです。そんな中でリリース日は決まっていたので、なんとか時間内に調整する事ができました。子会社の担当者に感謝したいですね」

One Teamを目指す上で「言いにくい事でもなんでも言い合う」スタンスで最高のプロダクト開発に向けてディスカッションを行います

 

右肩上がりの成長を見せて進研ゼミのメインコンテンツへ

 

高瀬「そうして2020年3月20日に無事リリースを迎えましたが、こちらは納期通りだったのですかね」

永田「はい、なんとか間に合わせる事ができました」

助川「アプリの審査において、リジェクト対応をされたのですが、みんなで知恵を出しあって申請をクリアする事ができました」

永田「チーム内では”間に合わないかもしれない…”という話も出ていたため、“絶対間に合う!大丈夫!”と言っていたのですが、実は内心あきらめかけていました(笑)なんとかリリースできて良かったです」

石田「審査中は連日、公開申請を行うWEBサイトのステータスが”審査中”になっているのを見て祈ってましたね(笑)」

永田「そして、その結果を見ながらslackが盛り上がりましたね(笑)」

高瀬「リリース後の使用状況や反応などはいかがでしたでしょうか」

永田「リリース当時は、研究開発部門発のプロダクトということもあり、事業部内ではあまり注目されていませんでした。しかし、いいものを作れたという自信があったので、必ず流れは変わると思っておりました。その後、ユーザーの評価がすごくよかったことで、少しずつ告知も増えていき、さらに経済産業大臣賞の受賞で社内外の注目もより浴びるようになり、今では、『進研ゼミ高校講座』のメインコンテンツとして紹介されています」

石田「新学年が始まる4月に学習アプリを提供しても、その後使い続けられず、アプリのユーザー数が下がっていく、ということがよくあるのですが、AI StLikeは右肩上がりでユーザー数が増えていきました。AI StLikeがあるから、コロナ禍の休校も乗り越えられた、『進研ゼミ』を続けたいと思った、という高校生の声もいただくことができました」

高瀬「永田様よりお話があった、第17回 日本e-Leaning大賞において、経済産業大臣賞を受賞に関しても詳しくお聞かせ頂きたいのですが、こちらは御社から応募をしたのでしょうか」

永田「そうですね、上司から“出してみたらどう?”と言われたので応募しました」

石田「ユーザーからの声であったり、実際に学習された方の学力が伸びた学習効果のデータも提示したのですが、そうした部分も評価されて受賞できたと思っています。まだまだリリースして半年未満のサービスで、ユーザー数も他のサービスに比べたら多いとは言えないので、このユーザー数で受賞できたのは異例だと思っています」

永田今後の発展や伸び代も評価されたと思っています」

高瀬「こうした賞を受賞できた事はbravesoftとしてはどうだったのでしょう?」

助川「賞の規模が多すぎてビックリしました。ただ、これまでベネッセ様の色々な苦労があったことも知っていたので、“本当におめでとうございます“という思いが強かったです。そして、リリースしてから“まだ1年経ってないんだ“と思うくらい濃密な時間を過ごせましたね」

 

 

“この人と一緒に仕事をしたい”と思える人とのものづくり

高瀬「それでは、最後に今後の展望に関してもお聞かせ下さい」

永田「先日(2021年3月20日)、英語をリリースする事ができました。更に国語リリースに向けた開発も進めておりますので、まずは主要教科を揃えていきます。AIを用いたAI StLikeは、ユーザー数が増えれば増えるほど価値が高まっていくサービスなので、たくさんの高校生のみなさまに利用していただくと同時に、数年後には、AI StLikeを使って合格する人が出てくるので、そのデータも生かしてさらなる価値発展も考えております」

高瀬「データが残るのでそうした成功事例も残るのは本製品の特徴ですね」

永田「そして、ゆくゆくは“学力証明書”のような形でユーザーの方のリアルな学習力が常にわかる世界にしていきたいです。学校の受験などは”一発勝負”の世界ですので、そうした1回の試験の結果だけで評価されない、その人の頑張りがもっと多面的に評価される社会にしていきたいと思っています」

石田「結果が残る事が学習の基盤となり、学習におけるマストアイテムとなっていくので、そうした目に見えた形の学習ログを元に、自分の学力を知る事、そして学力をあげていくことができるサービスにしていきたいと思います」

高瀬「このようにお話お聞きすると、AI StLikeの類似のサービスなどが出てくる事も考えられますが、その点いかがお考えでしょうか」

永田「学習データが集まらないとAIを作れないですし、我々はそうした基盤となる問題や、過去の様々なデータを持っていたので、1から作るのはなかなか難しいと思っています」

高瀬「なるほど、それではこの業界でブッチギリで存在感を出す事ができるのですね!更なる飛躍を楽しみにしていますが、それでは最後に今回bravesoftと一緒にプロジェクトに取り組んでAI StLikeを創った総括を頂けますでしょうか」

永田「実はAIのサービスは入社時からずっとやりたかったのですが、なかなか機会が無かったんです。そんな中で、別の仕事でbravesoft様の青木さんと知り合い、“この人と一緒に仕事したい”と思っていたところにAIのサービスに携われる機会があって、そのプロジェクトを進める事ができたので、そうした出会いやタイミングに感謝しています。そして、進めていく上で、PMの助川さんが“しっかりと意見を言ってくれる”ことが非常にありがたかったです。要件を決める側、指示する側である我々ベネッセが出した案に対しても、しっかりと反論をしてくれる。そういう一緒になっていいものを作りたいと思ってくれる会社は本当にありがたいです」

高瀬「ありがとうございます」

永田「我々みたいなDXを進めている会社は多いと思うのですが、bravesoft様のようなデジタルの会社が相手の組織文化を受け止めて、その上で、同じ目線で対話を繰り返し、関係構築していくことがDXの推進につながると思いました」

石田「私が一番印象に残っているのは“安心感”ですね。プロジェクトを進める上で、短期間の開発でプレッシャー迫る中、しっかりスケジュールを引いてくれて、しっかりと進行してくれた事で安心感がありました。その上でデザイン、モックなど、いつも意図を理解してくれて期待以上の物を出してくれました。こうしたAIの案件に対する経験が無いのに、やはり勘というか、蓄積された経験があり、そこに対する信頼感が凄くありましたし、“braveさんならできる”と信じられたから、社内でも自信を持って、企画を提案することができました。本当に感謝しています」

高瀬「この上ない賛辞のお言葉…ありがとうございます。最後に青木さんお願いします」

青木「AI StLikeに関しては無事リリースする事ができましたし、以降の改修や、別プロジェクトのお話も頂けております。僕自身も永田さん、石田さんをはじめとするベネッセ様からは色々とチャンスを貰える事で、色々と変われた事もあると思っています。やっぱり、自分達以外でも“楽しみながらものづくりをしていている人がいる”というのは、とても嬉しいですし、良い刺激を貰っていますので、これからも良い仕事をしていきたいですね」

投稿者プロフィール

二代目編集長